アパレル製品を生み出すためには、生産管理のお仕事が欠かせません。

「どんな製品を作るのか」「いつ頃店頭に並ぶのか」
「何着作るのか」「いくらで販売するのか」といった、多くの決定事項を担っているのが生産管理です。

この記事では、アパレルの流通に深く関与している、生産管理のお仕事についてお伝えします。

仕事内容や必要なスキル、仕事のやりがいや、あると有利な資格をまとめました。

アパレル流通の仕事とは

アパレルの流通の仕事は、川の流れに例えて表現されます。

川上、川中、川下と分類された、仕事内容や役割についてご説明します。

  • 川上|素材を生み出す
  • 川中|アパレル製品を生み出す
  • 川下|アパレル製品を届ける

川上|素材を生み出す

アパレル流通

川上は、製品として完成する前段階のお仕事です。

生地や糸、材料といったテキスタイルの生産や調達を行います。

川上で調達された生地や糸は、川中へ卸されて製品になっていきます。

デザイナーだけでなく、生産管理や企画をする人が集まっており、海外とのやり取りが必要になる場合には英語力が求められます。

川中|アパレル製品を生み出す

川上から卸された生地や糸などの素材を、製品として作り出すのが川中です。

アパレル製品の企画やデザイン、製造が川中の役割になりますので、実際に洋服を作り上げられる仕事です。

製品開発や販売計画を立てる、SNSで情報を発信してPRを行うのも川中の役目です。

川中で生産されたアパレル製品は、川下の小売店や店舗で販売されていきます。

川下|アパレル製品を届ける

川中で生産されたアパレル製品を、お客様に届ける段階が川下業務となります。

百貨店や量販店などで販売される段階のアパレル小売産業、ECサイトといったインターネット通販の店舗も含まれます。

お客様との接客センスが問われますので、川上や川中とは異なるスキルが問われる業種といえるでしょう。

消費者にとっては1番身近な存在であり、ブランドの顔とも言える部分です。

アパレル流通の職業

アパレル流通

川上、川中、川下の具体的な職業は、以下のようになります。

  • 川上|具体的職業
  • 川中|具体的職業
  • 川下|具体的職業

川上|具体的職業

素材を生み出す段階の川上では、このような職業の人達が働いています。

  • 繊維メーカー
  • テキスタイルメーカー
  • テキスタイルコンバーター

繊維メーカーでは合成繊維や天然繊維の開発や製造、テキスタイルメーカーでは織物やニット生地の企画や製造を行っています。

このように生地や糸の製造だけでなく、テキスタイルコンバーターという工場とメーカー間のやりとりを行うのも川上の仕事です。

川中|具体的職業

アパレル製品を生み出す段階の川中では、このような職業の人達が働いています。

  • アパレルメーカー
  • アパレル卸売業
  • アパレル縫製業

一般的に知られるアパレルメーカーも多く、活躍できる職種が多いのが川中です。

川下|具体的職業

ショップ販売員やECサイト運営で、アパレル製品をお客様に届ける段階が川下です。

お客様に声をかけて接客するだけでなく、製品管理やディスプレイ、お客様からの問い合わせや店内の清掃も業務となります。

製品に関する知識だけでなく、多くのスキルが必要となる職業です。

アパレルの生産管理プロダクトマネージャー

アパレルの生産管理は、プロダクトマネージャーとも呼ばれます。

アパレルのプロダクトマネージャーとは、製品の生産管理に基づいて製造などの納期を管理するのが主な仕事です。

ひとつの製品が完成するまでの流れを管理しますので、
デザイナーやパタンナーと連携をとりながら業務を進めていきます。

製品のデザインや素材といった完成度だけでなく、価格や納期などにも影響する影の立役者です。

アパレル生産管理の仕事

アパレル生産管理(プロダクトマネージャー)の仕事の内容についてご説明します。

業務内容はひとつではありませんので、ひとつの製品が完成するまでの流れに沿ってみていきましょう。

  • 計画の立案
  • 縫製工場の選定
  • 素材の調達
  • 価格交渉・指示
  •  進捗・品質管理

計画の立案

アパレル生産管理の仕事

マーチャンダイザー(MD)の販売計画に沿って、生産計画を立てていきます。

生産期間や数量、原材料の調達や納期といった一連の流れを考えていく段階です。

多方面での無駄を省き、製品のロスがでないように計画を立てます。

この段階での計画が、ひとつの製品の売上や利益を左右するといっても過言ではありません。

縫製工場の選定

計画が出来上がったら、製品の特性に合わせた縫製工場を選定していきます。

縫製工場によって得意な縫製や最小ロット、設備や単価が異なります。

また希望通りの納期に間に合うかといった点も、工場選びのひとつの要素となります。

アジア圏など海外の工場に発注する企業も増えていますので、語学が堪能な人材が重宝されます。

素材の調達

主資材となる生地、副資材となるボタンやファスナーを発注します。

流通コストも考慮しながら、製品価格が一定に抑えられるよう計算していきます。

ここで調達する素材は製品に必要なものだけでなく、品質表示タグや下げ札も含まれます。

できるだけ過不足なく、無駄がでないように素材を調達できるようにします。

価格交渉・指示

一着の製品にかかるコストを計算し、工場と価格交渉をしていきます。

正確な原価管理が求められるシビアな作業です。

工場との交渉が成立したら、縫製指示書で具体的な指示を出していきます。

縫製指示書では裁断から裁縫、アイロンがけまで、全体的に細かく指示を出します。

生産管理をする場合は、計画力や業務遂行能力だけでなく、指示を出す上で衣服に関する深い知識が必要になります。

 進捗・品質管理

依頼をしたら任せっきりではなく、工場での生産がスケジュール通りに進んでいるかの進捗状況をチェックします。

ひとつのパーツの遅れが全体的な納期に影響しますので、
素速く対応ができるように細かく状況把握していかなければいけません。

進捗状況と合わせて、品質についてもチェックしていきます。

完成品ができれば品質を確認し、卸し担当の営業や直営店に引き渡して、生産管理のお仕事が完了となります。

アパレル生産管理の仕事に必要なスキル

アパレル生産管理は、製品を作る一連の流れの監督のような立場です。

さまざまなスキルが必要になりますので、具体的にご紹介します。

  • コミュニケーション能力
  • 縫製や生地・資材の専門知識
  • 品質管理の知識
  • 交渉能力
  • 語学力
  • トラブル対応力

コミュニケーション能力

アパレル生産管理スキル

生産管理の仕事は多くの部署とのやり取りがありますので、コミュニケーション能力が必要不可欠です。

それぞれの部署をまとめる立場なので、全ての部署や取引先との円滑なコミュニケーションが求められます。

スケジュール管理も大切な仕事のひとつですが、急遽変更しなければならないケースがあります。

取引先に「〇〇さんの頼みなら仕方ない」と言わせてしまうような、日頃の信頼関係作りが重要です。

縫製や生地・資材の専門知識

生産管理の仕事は、工場とのやり取りや指示出しをします。

そのため縫製や生地、資材の専門知識がないと、仕事になりません。

ただ知識があるだけでなく、「この素材を使えば運送費を抑えられる」「通気性がよくなるからクオリティが上がる」というように、視野を広くもった判断力が必要です。

知識が浅いと取引先からの信頼が薄れてしまいますので、
常に向上心を持って知識を深めていきましょう。

品質管理の知識

日本は製品の品質が高い国であると世界からの認識がありますが、その品質基準を保つのは生産管理者の仕事あってこそです。

ただ良い製品を作り続ければ良いというわけではなく、
法律上の知識も欠かせません。

例えばアパレルであれば、PL法という法律が品質管理に関わってきます。

製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定した法律です。
引用:消費者庁|製造物責任法の概要Q&A

生産管理者は、このような法律的な専門知識を持った上での、品質の保持が求められます。

交渉能力

アパレルの生産管理をしていく上で、交渉能力が必要になる場面は多々あります。

コストを抑えるための交渉や、納期の厳守について厳しく言及しなくてはいけない場合があるでしょう。

コミュニケーション能力にも通じるものがありますが、ただ一方的に要求を押し付けるようなやり方では、仕事が回らなくなっていくでしょう。

語学力

アパレル生産管理スキル

アパレルの生産管理は、日本国内だけで完結するものではありません。

衣料品の生産は海外で行うのが主流なので、英語だけでなく、中国語やベトナム語やミャンマー語といった東南アジアで通用する言語能力がある人材は強いです。

アパレルと語学力は強く関係していて、デザイナーやパタンナーといった川上の専門職では英語が話せるといいでしょう。

川中での工場とのやり取りは英語や中国語、川下での販売はインバウンドのお客様向けに英語が話せると理想的です。

トラブル対応力

アパレルの生産管理に限ったものではなく、どんな職種でもトラブルはつきものです。

「サンプル通りの製品ができない」「天候が理由で物流が止まる」など、トラブルが起きた時に、冷静に対処していけるかが腕の見せ所です。

トラブルへの対応力は経験値が関係してきますので、実務でスキルアップしながら臨機応変な力をつけていきましょう。

アパレル生産管理のやりがい

多くの業務をこなさなければいけないアパレルの生産管理は、以下のような仕事のやりがいを感じられます。

  • 製品の生産に関われる喜び
  • 各方面の調整がうまくいくと嬉しい
  • 新しい製品を早く見れる

製品の生産に関われる喜び

アパレル製品の生産工程に関われるというのが、最も大きな喜びであるといえます。

生産管理は、計画立案からスケジュール管理、素材の選定や工場選びなど、ほぼ全ての業務に関わっています。

ゼロから目に見える製品を作り上げていく喜び、その製品が店頭に並ぶ喜びは、生産管理の大きなやりがいのひとつとなります。

各方面の調整がうまくいくと嬉しい

アパレル生産管理やりがい

アパレル生産管理は、各方面の担当者とミーティングを重ねながら交渉や調整を行っていきます。

時には「期待通りに調整ができない」「取引先が首を縦に振ってくれない」という悩みを抱えるかもしれませんが、
その一方で調整がうまくいくと何ともいえない喜びを感じられます。

資材の再調整やコストの見直しといったトラブルが想定できますが、大きなトラブルを解消できると喜びが一層大きく感じられます。

新しい製品を早く見れる

アパレル業界で仕事をする方は、もともとお洋服が好きでトレンドにも詳しいという方が多いです。

生産管理は出来上がった製品をいち早く見れるので、世に出る前の製品を見るのが楽しいという方もいます。

新しい人気製品を作れば「自分が流行を生み出している」という感覚を味わえるかもしれません。

アパレル生産管理で役立つ資格

アパレルの生産管理をしたいと志望する方は、以下のような資格があると有利です。

  • 生産管理プランニング
  • 生産管理オペレーション
  • 繊維製品品質管理士(TES)

生産管理プランニングとは、中央職業能力開発協会(JAVADA)が主催する「ビジネス・キャリア検定試験」の一種です。

生産システムや設計、計画などの業務を遂行する生産管理部に従事する人におすすめの資格です。

生産管理オペレーションとは、製品やサービスを効率的に生産するためのスキルで民間資格となります。

繊維製品品質管理士(TES)は、消費者と企業の信頼関係の改善を目的とし、消費者からのクレームがでないよう製造や販売を行う資格です。

他には先述した通り、語学力に長けているとより良いでしょう。

アパレル生産管理は製品生産のスペシャリスト

アパレルにおける生産管理とは、計画の立案から製品を完成させて、直営店などの店舗に引き渡すまでの全ての流れに関わる立場です。

何かひとつの技術に長けている人というよりは、冷静で視野が広く、周囲の人達に気遣いをしながら自分の仕事を的確にこなしていけるような人が向いています。

完成した製品が店頭に並ぶと大きな喜びを感じられるでしょう。

必要なスキルが多く大変な仕事ではありますが、流行を生み出せる大きな仕事でもあるといえます。

製品を生産していくスペシャリストとして向上心を忘れず、知識を身に着けていきましょう。